【浅草】日本のサウナ文化を世界へ「彩温 – SAION」

2023年に浅草に誕生したサウナ施設「彩温 – SAION」

単なる温浴施設としてだけでなく、日本文化を体験できる場として外国人観光客に人気の場となっているという。

日本で隆盛を極めるサウナブームは海外の人の目にどのように映っているのだろうか。

この小説の登場人物

名前 / Name 　
大塚 誠也 Otsuka Seiya　　
自己紹介 / Profile
仕事おわりにサウナに通うのが日課の30歳のサラリーマン。
お酒よりも入浴後のサウナドリンクとサ飯が大好物。

ととのい日記

大塚誠也は、東京の喧騒を背に、足早に都営浅草線の出口から外に出た。独身30歳にして仕事一筋だった彼にとって、平日の午後からサウナを楽しめるなど、めったにない贅沢だ。

都会の空気とは裏腹に、彼の胸は期待で弾む。重い身体を持て余しながらも、彼は腕を大きく振り、人混みを縫うようにして「彩温 – SAION」へと急ぎ足で向かった。

店の存在を示すは、風情ある木製の看板。彼の好物である焼き鳥屋の匂いと、隣接する甘味処の誘惑を振り切り、彼は深い息をつきながら、ようやくサウナ施設の前に立った。そこは都心とは思えぬ閑静さと、和を基調とした風情が漂う場所だった。

入店〜受付

大塚誠也は、緊張の面持ちを浮かべながら「彩温 – SAION」の木の戸をくぐった。内装はモダンと和が見事に融合した空間で、どこか落ち着く香りが漂っていた。彼はフロントへ向かうと、暖かい笑顔のスタッフが「いらっしゃいませ、彩温へようこそ」と迎えてくれた。

「お一人様ですか？こちらのプラン表をご覧ください」と、スタッフは優しくプランの説明を始めた。壁には日本語と英語で書かれた料金表が掲げられており、誠也は目を通した。

「基本の入館料は5時間2,500円です。じっくりとサウナをお楽しみいただけます。時間を気にせず、ごゆっくりされたい場合は、時間無制限プランの3,500円もございますよ」とスタッフは言葉を添えた。

誠也は少し迷った後、「早朝割引はどういう…」と問いかけると、スタッフは「オープンから3時間以内ですと、大人1,800円でお得にご利用いただけます。今はちょうどその時間ですね」と教えてくれた。

「夜遅くまでお忙しいお客様にはナイトプランもございます。20時以降にご入館されると、大人2,000円でお楽しみいただけますよ」と続ける。

そして、彼女は目を輝かせて「エクスペリエンス・ジャパンというプランもありまして、サウナのご利用はもちろん、浅草の文化を感じるガイドツアーや、日本茶体験、お土産にもなるレンタル浴衣がセットになって4,500円です」と熱心に説明した。

誠也は、サウナで汗と共に日常のストレスを流し去りたいと思い、迷うことなく「時間無制限プランでお願いします」と決めた。スタッフは「かしこまりました、時間を気にせず存分にお楽しみください」とニコリと微笑んで、キーホルダー付きのタオルセットを手渡した。

彼は心地良い緊張感を抱えつつも、これから始まるリラクゼーションの時間への期待に胸を躍らせていた。

• 通常営業：10:00 – 23:00
• 早朝割引適用時間：10:00 – 13:00（入館時間）
• ナイトプラン適用時間：20:00 – 23:00（入館時間）

まずはサウナへ

フロントの賑わいから一歩離れると、大塚誠也は脱衣所の落ち着いた雰囲気に包まれた。木の温もりが心地よく、個々のロッカーに衣服をしまいながら、彼はまわりの客層を見て取った。若いサラリーマンから年配の方まで幅広く、また外国人の姿もちらほら。皆、同じ目的で集まっている。サウナという共通の楽しみが、そこにはあった。

体を丁寧に洗い清めた後、彼は最初に「森幽 – しんゆう」へ足を踏み入れた。扉を開けると、ヒノキと杉の混じり合う香りが彼を迎え、目を閉じると森林の中にいるような錯覚に陥る。壁面の映像は静かに変わる四季を映し出し、鳥の鳴き声や木々がそよぐ音が、都会の喧騒を忘れさせた。温度は決して高くなく、長い時間いても平和で穏やかな気持ちが続く。

次に誠也は「岩結 – がんけつ」へと進んだ。岩盤浴のようなこのサウナ室では、天然の岩が積み上げられ、その間から優しい照明が漏れていた。床に座ると、岩から発せられる遠赤外線がじんわりと体を温め、都会のストレスで固くなった心と体がほぐれていくのを感じた。ここには静寂と穏やかな安らぎがあり、一時の退避所のようだった。

最後に、「炎舞 – えんぶ」の扉を押し開けた瞬間、高温の空気が誠也の顔を打った。刺激的なほどの熱さだ。フィンランド式のサウナで、定期的に行われるオーフキャストにより、アロマの香りが充満していた。彼は深く息を吸い、ロウリュの水蒸気が肌に触れるたびに新鮮な活力を感じた。ここでは汗がほとばしり、体の内側からのデトックスを促進しているのを感じることができた。

これらのサウナ室を巡ることで、誠也は「彩温 – SAION」が提供する、心身の癒しと健康促進の旅を経験した。そして彼は、この場所が多くの人々にとって、ただのサウナ施設以上の意味を持っていることを理解した。それは身体を温める場所でありながら、心の安寧をもたらし、人と人との結びつきを深める社交の場でもあったのだ。

水風呂

炎舞 – えんぶの灼熱から脱した大塚誠也の体は、汗で濡れ光っていた。心地よい熱さに包まれた彼の肌は、冷たい水を求めていた。彼は、水風呂「涼瀬 – りょうぜ」へと向かった。その名の通り、清涼な渓流を模しており、まるで山中の秘湯に足を踏み入れたような錯覚に陥る。

ゆっくりと水面に足を沈めると、天然石と小石が敷き詰められた底が足裏に心地よい刺激を与えた。冷たい水はじわじわと彼の体温を奪っていき、火照った体が一気にクールダウンするのを感じた。目を閉じると、壁面に映し出される春の桜、夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色が季節の移ろいを演出し、まるで自然の中で水浴びをしているような錯覚に包まれる。水の流れる音はさざ波のように穏やかで、誠也の心の中の緊張を解きほぐしていった。

次に彼が訪れたのは「冷碧 – れいへき」だった。露天の空間は、夜の訪れとともに星空を映し出す幻想的な天井で、都会の夜とは思えないほどの静寂と美しさが広がっていた。竹林と季節の花々が周囲を囲み、深い青のタイルが水面を美しく彩る。冬の冷たい空気と温かい水のコントラストは、生き生きとした感覚を呼び覚まし、誠也はこの瞬間にいることの幸福を噛みしめた。

水風呂の冷たさが、熱くなった体を正常な温度へと戻していく。彼は、この対比こそがサウナの真髄であると感じた。このリズムが、体の中に新たな活力を生み、心をリフレッシュさせるのだ。サウナと水風呂の交互浴は、ただのルーティンではなく、自己と対話する時間となった。

外気浴スペースでととのう

体を冷やした大塚誠也は、水から上がると、露天風呂エリアの一角にある「憩楽 – けいらく」へ足を運んだ。ここは、自然の息吹を感じながら休憩できるよう設計された開放的なデッキスペースだ。彼はひとつのリクライニングチェアに身を沈めた。そのチェアは高級感あふれる木材でできており、身体をゆったりと支えてくれる。目を閉じると、木のぬくもりが全身を優しく包み込むようだった。

彼の周囲は豊かな緑に囲まれ、耳を澄ますと鳥たちの囀りや木々が風にそよぐ音が聞こえてきた。四季折々の景観が目の前に広がり、見渡す限りの自然が彼をいっそうの安らぎへと誘う。春ならば桜の花びらが舞い、夏は緑深い木々が生い茂り、秋には紅葉がデッキに彩りを添え、冬は雪に覆われた枝が静寂を保つ。

憩楽 – けいらくにはハンモックも設えられていた。揺らぐ感覚が心地よいと感じた誠也は、しばしの間ハンモックに身を預けた。ゆっくりと揺れるハンモックのリズムは、彼の心の波を穏やかにし、日常の喧騒から完全に隔離されたかのように感じさせた。

時折、風が温泉の湯面を撫でていく。隣接する「温蔵 – おんぞう」の源泉かけ流しの湯気が、夜のライトアップとともに幻想的な雰囲気を演出し、それが遠くから見える。温泉から漂う湯気が混じり合いながら、冷たい空気とふれあうことで、小さな雲を作り出し、それがまた夜空に溶けていく様子は、心まで洗われるようだった。

休息の後、誠也は再び深く息を吸い込んだ。彼の中で、新しいエネルギーが湧き上がるのを感じていた。

お風呂であたたまる

サウナの熱気と冷涼な水風呂の対比を心ゆくまで楽しんだ大塚誠也は、「湯心 – ゆしん」エリアに足を踏み入れた。ほんのりと温かい湯気が空間を満たし、その穏やかさが一日の疲れを癒すような気がした。

彼はまず「光潤 – こうじゅん」に浸かることにした。白と青の大理石が配置された湯船にゆっくりと体を沈めると、滑らかな大理石の触感が肌を撫でるようだった。湯船から上がる蒸気が光に反射し、まるで水の中にいるような幻想的な景色を作り出していた。

次に彼の体を包み込んだのは「絹路 – けんろ」のシルク風呂だった。微細な気泡が肌を優しく撫で、まるで高級な布地に包まれているような心地よさを感じさせた。暖かいお湯は血行を促進し、ゆったりとした時間が流れる中で、彼の心は静寂に向かいつつあった。

最後に「香樹 – こうじゅ」のハーブ風呂に身を委ねた。季節ごとに変わるハーブの香りが湯気とともに漂い、アロマテラピーの効果で深いリラクゼーションがもたらされた。心身の緊張がゆっくりと解けていくのを感じながら、彼は深い満足感に包まれていた。

「湯心 – ゆしん」エリアは、まさに名の通り心からの安らぎを与える場所であった。誠也は心も体も潤い、温かいお風呂で温められた身体は、すべての重みを失い、宙に浮かんでいるかのように感じられた。彼は静かに目を閉じ、この至福の時間がずっと続くことを願った。

レストランでの食事

汗と共に流れ去った体内の水分と塩分を補うため、大塚誠也は「彩温 – さいおん」内のレストラン「味彩 – みさい」へ向かった。彼は、温かいお風呂から上がると、サウナの後の空腹を刺激する、さらなる暖かさと安らぎを求めていた。

レストランに足を踏み入れると、和モダンの装飾が穏やかな雰囲気を放ち、軽やかな日本の伝統音楽が空間を満たしていた。テーブルにつくと、彼はまず、カウンターに並ぶカラフルなスポーツドリンクの中から、一つを手に取った。そのドリンクは鮮やかな青色で、冷たくて甘酸っぱい味が、サウナで疲れた身体に心地よい刺激を与えた。氷が軽やかにグラスに触れる音は、まるで清流のせせらぎのようで、彼の渇いたのどを潤し、活力を取り戻すのを助けてくれた。

水分補給を終えると、誠也はメニューを手に取り、食事を選び始めた。彼の目を引いたのは、新鮮な刺身の彩り豊かな寿司盛り合わせと、サクサクの衣が心地よい天ぷらそばのセットだった。彼は注文を決めると、心待ちにしていた料理が運ばれてくるまでの間、窓の外の美しい庭園を眺めた。

料理が到着すると、彼はまず寿司から一貫を口に運んだ。新鮮な魚の上品な味わいとシャリのほどよい酸味が、彼の味覚を満たし、天ぷらそばのダシの効いたつゆと組み合わさると、身体の奥から温まり、至福の時を過ごすことができた。

食事を終える頃には、誠也の体も心も完全にリセットされ、新しい活力で満たされていた。彼は「彩温 – さいおん」の提供する全ての経験が、ただのリラクゼーションを超え、心身の完全な回復を促すものであることを実感した。そして、そこにいるすべての人々が、同じように日々の疲れを癒し、新たなエネルギーを得ていることを感じることができた。

ラウンジで休憩

食事を終え、満足感に包まれた大塚誠也は、軽い足取りでレストラン「味彩 – みさい」を後にし、「彩温 – さいおん」内のラウンジ「憩楽 – けいらく」へと向かった。身体は温かいお風呂と美食でほぐされ、心は安らぎの時間を求めていた。

ラウンジに足を踏み入れると、そこは別世界のように静かで、ゆったりとした空間が広がっていた。柔らかな照明と穏やかに流れる音楽が、誠也を迎え入れる。彼は、高級感ある木材で造られたリクライニングチェアに身を委ねた。チェアは彼の体を優しく受け止め、疲れた筋肉をいたわるかのようにフィットした。

目の前には大きな窓があり、そこから「彩温 – さいおん」の自慢である内庭が見えた。庭は四季折々の自然美で彩られ、今は初夏の緑が鮮やかに生い茂る中、水面には夕日が煌めいていた。彼は瞼を閉じ、深い呼吸を繰り返しながら、自然の音、水の流れる音、風の音に耳を傾けた。それはまるで、都会の喧騒から隔絶された静寂の中、瞑想にふけるかのようだった。

時折、チェアを軽く揺らしながら、誠也は小さなため息をついた。それは幸福感の表れであり、この場所がもたらす心の平和への感謝の息吹だった。彼は、このラウンジがただの休憩場所ではなく、日々の生活から解き放たれ、自己再生のための聖域であることを実感していた。

やがて、彼はゆっくりと目を開けた。ラウンジの暖かい光の中で、周囲を見渡すと、同じように休息を楽しむ他の客たちがいた。彼らは皆、それぞれの方法で心と体を癒し、日常を忘れていた。

ととのいを終えて

サウナ施設「彩温 – SAION」の門をくぐり抜けた大塚誠也は、すがすがしい気持ちで浅草の夕暮れを歩いた。身も心も洗われたような清々しさを感じながら、彼はこの日の体験を噛みしめた。施設の温もりが彼の体にまだ残り、その暖かさは冷えた空気の中でもひときわ心地よかった。

サウナで出会ったフィンランド人の男性、エリックとの会話が頭をよぎる。サウナ後のリラクゼーションスペースで、彼らはお互いの国のサウナ文化について語り合った。「日本のサウナはすごい熱いね。フィンランドのサウナはもっと温度が低くて、サウナの後は雪に飛び込むんだ」とエリックが言ったのを、誠也は笑いながら思い出した。

フィンランド人の彼は、母国のサウナ文化と日本のそれとの違いを興味深く語ってくれた。彼によると、フィンランドのサウナは社交の場でもあり、家族や友人との絆を深める重要な役割を果たしているという。そして、日本のサウナは、より個人的な癒しと静けさに焦点を当てていると感じたと彼は言った。その話を聞きながら、誠也は日本独自の「温故知新」の精神を再発見したように感じた。

誠也は、サウナで汗を流し、水風呂で体を引き締め、そして温泉で心を解きほぐす。そんな一連の流れが、日本人の精神性とどう結びついているのかを、エリックに語った。そして、エリックは誠也の話に熱心に耳を傾け、自国のサウナとの違いに興味津々だった。

また、彼は「彩温 – SAION」が提供する和の空間とモダンなサービスの組み合わせについても考えた。ここでは、伝統的な日本の美学が現代のニーズと見事に調和していた。彼は、この施設がただのリラクゼーションスペースを超えて、文化的な交流の場にもなり得ることを認識した。

夕闇が深まる中、誠也は家路につく。彼の心には、日本のサウナ文化が外国人にも愛され、そして理解され得ることへの小さな誇りがあった。また、彼自身も、外国人の目を通して自国の文化を再発見することができた。街の灯りが一つまた一つと灯り始める中、彼は「彩温 – SAION」の訪問が自分にとってただの休息以上のものであったことを、深く感じていた。そして、また来る日を心待ちにしながら、心静かに歩みを進めた。

あとがき

大塚誠也

「彩温 – SAION」という施設名の由来を聞いてみました！

「彩温 – SAION」の施設名は、日本語の「彩（さい）」と「温（おん）」という二つの言葉の組み合わせから成り立っています。それぞれの言葉が持つ意味合いや響きが、このサウナ施設のコンセプトや魅力を象徴しています。

1. 「彩（さい）」：色彩や多様性を意味し、日本の四季折々の美しさや文化の豊かさを表現しています。また、「彩り」という言葉は、豊かでバラエティに富んだ経験や人生を彩る楽しみといった意味も込められており、サウナ施設が提供する多彩なリラクゼーションの体験と連想させます。
2. 「温（おん）」：温かさや温もりを連想させ、サウナの温熱効果や人々が集い、交流する温かな場所というイメージを伝えます。また、「温」は「温泉」を思わせ、日本の温泉文化や癒しの伝統を連想させることもできます。

総合すると、「彩温 – SAION」は、訪れる人々の生活に色とりどりの豊かな体験を提供し、心身ともに温もりと癒しをもたらす場所であるという意味が込められています。日本の伝統的な美意識と現代のリラクゼーションのニーズを融合させた、独自のサウナ施設としてのアイデンティティが表現されているのです。

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大塚 誠也

OTSUKA SEIYA

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仕事帰りにサウナを巡るのが日課のアラサーリーマン。
ととのった後のサ飯が一番の至福。