【山梨】富士山の麓に浮かぶドームの楽園「空中庭園サウナ・アリューシャ」

大塚誠也は、今週末に行くサウナを既に決めていた。

最近、富士山の近くにできたばかりの巨大なサウナ施設「アリューシャ」だ。

聞き慣れない語感と「高き空に浮かぶ楽園」のキャッチコピーを前に期待に胸が高鳴る。

彼の心と体は、未知の癒しを求めて山梨へと旅立った。

この小説の登場人物

名前 / Name 　
大塚 誠也 Otsuka Seiya　　
自己紹介 / Profile
仕事おわりにサウナに通うのが日課の30歳のサラリーマン。
お酒よりも入浴後のサウナドリンクとサ飯が大好物。

ととのい日記

秋の爽やかな風が大塚誠也のシャツを軽く撫でた。

彼は、日常からの一時的な逃避を求めて、噂の「空中庭園サウナ・アリューシャ」へ向かっていた。東京の喧騒を抜け、電車とバスを乗り継ぎ、ほどなくしてその施設の前に立っていた。

ふくよかな体型が少し息を切らせながらも、期待で心は躍っていた。

目の前に広がるのは、空に浮かぶような緑豊かなオアシス。心地よい自然の中に溶け込むよう設計された建物は、彼がこれまでに経験したどのサウナ施設とも異なる雰囲気を放っていた。

誠也は、この場所なら、仕事のストレスも体の重さも、ひととき忘れられるかもしれないと思いながら、大きく息を吸い込んだ。

到着〜入店

大塚誠也は息を整えながら、ずっと夢見ていた「空中庭園サウナ・アリューシャ」の豪華なガラス扉を押し開けた。フロントデスクは開放的で、自然光が巧みに取り入れられていた。彼の登場に、スタッフは柔和な笑顔で迎えた。

「いらっしゃいませ、アリューシャへようこそ。こちらで料金プランのご説明をさせていただきますね。」スタッフがそう言うと、誠也は大きなモニターに目を移した。そこには、緑の葉を模したアイコンで表されたいくつかのプランが映し出されている。

「スタンダードプランは全てのサウナと共用ラウンジのアクセスを含んでおりますが、プレミアムプランにはプライベートガーデンビューのリラクゼーションルームが付随しています。また、エクスクルーシブプランでは、個別のリラクゼーションルームに加え、シェフ特製のデトックスメニューが楽しめるレストランの予約が可能です。」

誠也の目は、プレミアムとエクスクルーシブプランを行き来した。肥満気味の体にはデトックスも魅力的だったが、今日はあくまでサウナを楽しむために来たのだ。

「では、スタンダードプランで」と誠也が言うと、スタッフはにっこりと頷き、バンド型のデジタルキーを手渡した。「このキーで全てのドアが開きます。どうぞ、ゆっくりとお過ごしください。」

彼はフロントのスタッフに感謝し、深呼吸をしてからエレベーターに向かった。金属の扉が閉じると同時に、彼の心も日常から隔絶されたように感じた。上層へと向かうエレベーターの中で、誠也はこれからの数時間を想像し、わくわくしてきた。自分へのご褒美に、そして新たな自分への第一歩に、このサウナ体験がどんな意味を持つのか、今はまだ知らない。けれども、それを知るのが、これからの楽しみだった。

サウナ

誠也は脱衣所で一息つきながら、無駄なものをすべて剥ぎ取るように服を脱ぎ捨てた。彼にとって、この儀式は新たな世界への入口だ。体重は重いが、ここではそれもただの数字に過ぎない。瞬く間にレンタルのタオルに身を包み、彼は浴室へと向かった。

シャワーで汗と都会の喧騒を流し去り、ついにサウナの扉を開ける。誠也が最初に選んだのは「天空のロウリュ」だ。90°Cの熱波が彼を包み込むと、身体の芯から温まる感覚に満たされた。そして、その大きな窓からは、雄大な富士山が聳え立っている。熱い空気を吸い込む度に、都会の生活で疲れた心が少しずつ解放されていく。

定期的に行われるロウリュサービスが始まると、熱波がさらに強まる。誠也はその熱さを全身で感じながら、心地よい汗を流した。この瞬間、彼の体はただの容れ物ではなく、自分を癒すための神殿となる。

サウナ室を出た誠也は、「星降る夜空」へ。ここでは80°Cの温度が彼を迎え、中湿度の熱気が包み込む。夜になるとLED照明が星空を演出し、まるで宇宙空間にいるような錯覚に陥る。彼は閉じた目に浮かぶ無数の星々に心奪われた。

次に「森林浴スチーム」。55°Cのやわらかな熱さと高湿度の蒸気が森林の中にいるような感覚を与えてくれる。アロマテラピーの香りが混じり合い、自然の音が耳を慈しむ。ここでは、彼の思考がすべて静かに流れ去り、リラクゼーションの極みを経験する。

「滝見の休息」は次回の訪問での楽しみとして取っておき、誠也は一通りのサウナ体験を終えた。彼の身体も心も、まるで生まれ変わったかのような軽やかさを感じていた。この空間では、彼の肥満も、独身も、サラリーマンとしての悩みも、全てが無意味に思えた。ただの人間が、自分自身を取り戻すための、至福の時間だった。

水風呂

サウナの熱気に包まれた肉体を冷ますべく、誠也は「霧の楽園」へと足を運んだ。水風呂の名称が約束する通り、水面からは微細な霧が立ちのぼり、幻想的な光景が彼を出迎えた。肌を刺すような18°Cの冷たさが、サウナで火照った彼の体にはちょうど良かった。水にゆっくりと身を沈めると、肌が一瞬で引き締まるのを感じた。

一息つきながら、霧が生み出す神秘的な空間に彼は身を委ねる。ここでは、温度の対比がもたらす快感が、汗とともに体内に蓄積されたストレスを洗い流していく。水風呂からのぼる霧は、彼の周りを漂い、視界を優しく包み込む。それはまるで、彼だけのために用意された癒しのヴェールだった。

「天然石の彫刻」にも惹かれ、誠也は16°Cのより冷たい水に体を浸した。天然石からなる水風呂は、滑らかで冷たい水が滝のように流れ落ちる。この冷たい水流は、彼の疲労を忘れさせ、リフレッシュさせてくれる。天然石のひんやりとした感触が彼の皮膚に心地よく、彼はこの水風呂がもたらす豊かな自然の感覚を堪能した。

夕暮れ時、誠也は「月光浴」を試すことにした。水風呂は20°Cとやや温かく感じられ、1.5mの深さが彼の体をしっかりと支えてくれる。月光を模した照明が水面を照らし、夜にしか見せない特別な体験を彼に提供した。星の光にも似た柔らかな灯りが、水と共に彼の体を優しく包み込む。

時間を忘れてサウナと水風呂を繰り返した誠也は、最後に「青空プール」で空を仰ぎながらゆっくりと体を冷ました。この開放的な空間で、22°Cの水は、昼の日差しと相まって、彼の心身に温かな安堵をもたらした。そして、ふと気づけば、竹林に囲まれた「竹林の静寂」で最後の冷却を。19°Cの水が静寂に包まれた空間で静かに流れ、カップルや少人数での訪問に適したこの場所は、彼にとっての最後の隠れ家となった。

サウナと水風呂のセッションを終えた誠也は、疲れた身体が生まれ変わったような軽やかさを感じていた。この施設は、彼にとって単なるリフレッシュの場所を超え、自己再生の聖地となったのだった。

外気浴スペース

水風呂からの清涼感を体に纏いながら、大塚誠也は外気浴スペースへと足を運んだ。温かな日差しの下、湯上りの肌を優しく包み込む風が、都会の喧騒を忘れさせる。彼は裸のまま、外気の中で深呼吸を繰り返した。冷えた身体に外気が触れる度、心地よい刺激が全身を走り、さっきまでの熱さが嘘のようだった。

この外気浴スペースは、都市の空中庭園のように、樹木に囲まれており、自然の息吹が感じられる。木々の間を通る風は、サウナで高まった体温を穏やかに下げてくれる。誠也は緑の葉を眺めながら、都心にいながらも森林浴を楽しむような錯覚に陥った。耳を澄ませば、遠くの都市の雑音よりも鳥のさえずりや風の音が大きく聞こえてきた。

彼は木製のリクライニングチェアに体を預ける。その椅子は、体のラインに沿うように設計されており、リラックスするには最適な場所だった。閉じた目の向こうには、サウナの熱、水風呂の冷、そしてここ外気浴スペースの心地よさが、心地よいコントラストを生んでいた。

誠也は時折、目を開けては空を仰ぎ見た。青く澄み切った空の下、白い雲がゆったりと流れる様子は、まるで彼の心の中の雑念を洗い流してくれるかのようだ。彼の視界の隅には、高層ビルのスカイラインがチラリと映るが、ここはまさに都会のオアシス、現実と隔絶された空中庭園だった。

時間が経つにつれて、彼の心と体は完全にリセットされ、すべての感覚が研ぎ澄まされていくのを感じた。やがて、誠也は深く満足したため息をついた。この一時の静寂が、日々の疲れを癒し、再び日常に向き合う力を彼に与えてくれる。外気浴の価値は、こうした穏やかな瞬間にこそあると、彼は心から実感した。

お風呂

汗と共に日頃の疲れを流し切った大塚誠也は、サウナと水風呂の交互浴の締めくくりに、温かいお風呂で体を温め直すことを決めた。彼の肩はすでに冷水と外気で引き締まり、いまや温水の懐に飛び込む準備が整っていた。

浴室にはほのかな灯りがともり、水の揺らぎが穏やかな波紋を描いている。緩やかに身を沈めた途端、温かさが彼の身体を包み込む。水面から立ち上る湯気が、顔を撫で、心地よい温もりが誠也の心を解きほぐしていった。湯船は、心地よい体温に設定されており、彼はまるで母の胎内にいるような安心感を覚えた。

温水の中で誠也は目を閉じ、全ての感覚をこの一瞬に集中させる。疲れた筋肉がほぐれ、血行が促進されるのを実感し、さらに深いリラクゼーションへと導かれる。このお風呂はただの暖まる場所ではない、それは彼の存在全体を包み込む癒しの空間だった。

ぬるめのお湯は、サウナで火照った皮膚を優しく慰め、水風呂で引き締められた体を丁寧に解していく。周囲の音はお湯に溶けて遠のき、誠也の耳には自分の心臓の鼓動だけが響いた。静けさが彼の内なる声と対話を始める。ここにいる幸福、ここにある至福、彼は全てを肌で感じながら、自身の存在を確かめるように呼吸を繰り返した。

誠也が目を開けると、お風呂の壁には優しい色彩のタイルが、水の動きによって生き生きとしたアートワークを創り出していた。湯面に映る光が、幻想的なパターンを作り出し、それは彼の心の中にも新たな模様を描いていく。水の中、光の中、そして暖かさの中で、大塚誠也は新たな日々への活力を静かに、しかししっかりと蓄えていた。

レストランでの食事

滝のような汗と共に流れた塩分と時間を、大塚誠也は体内に戻したいと思っていた。サウナとお風呂の後の空腹は、さながら冒険の終わりに訪れる、心地よい達成感のようなものだ。そんな彼の足は、ふらふらと施設内のレストランへと向かった。

レストランは木の温もりを基調としたインテリアで、落ち着いた雰囲気が漂う。誠也は窓際の席に身を落ち着けると、まずはスポーツドリンクで水分補給をすることにした。冷たくてフルーティーなドリンクは、見るからに美味しそうに冷蔵庫で光を放っていた。

キンキンに冷えたドリンクのボトルを手に取り、彼はキャップを外す。炭酸が抜ける静かな音と共に、甘酸っぱい香りが漂い、誠也の感覚を一気に呼び覚ます。一口飲み込むと、清涼感が口の中を駆け巡り、身体中の細胞が活性化するのを感じた。ドリンクの甘さが、サウナで失ったエネルギーを優しく補填していく。彼はゆっくりと体を休めながら、冷たいドリンクを堪能した。

水分補給を終え、誠也はメニューを手に取る。料理の数々は地元の新鮮な食材を用い、身体に優しい調理法で仕上げられていた。彼の選んだのは、軽やかなオリーブオイルで和えられた季節の野菜と、炭火でじっくり焼き上げられた地鶏のグリル。プレートに並べられた料理は、カラフルで生命力に溢れ、彼の体だけでなく目でも楽しませてくれた。

フォークを手に取り、まずは野菜から。シャキシャキとした歯触りと野菜本来の味が口の中で広がる。次いで地鶏へと箸を進めると、外はカリッと中はジューシーな絶妙な焼き加減に、思わず笑みがこぼれた。旨味が舌を打ち、温泉で整えられた彼の体に優しく溶け込んでいく。

窓の外には夕焼けが広がり、空中庭園の美しい景色が食事の贅沢さをさらに引き立てる。レストランの穏やかな音楽と周囲の客の談笑が、食事の背景音となり、心地よいバランスで彼の耳に届く。ここでは、身体だけでなく心までが栄養を受け取る。大塚誠也は、この一日の終わりに、完全なる満足感と共に、新たなる明日への活力を得たのだった。

食後はゆっくり休憩

食後の満足感と心地よい疲労が交差する中、大塚誠也は「空中庭園サウナ・アリューシャ」のラウンジへと軽やかな足取りで向かった。レストランの賑わいから一歩外へ出ると、そこは静寂と穏やかな灯りが包む安らぎの空間だった。

柔らかな照明のもと、ラウンジにはふかふかのソファが並び、各席は適度な距離を保ちながらも、親密さを感じさせる配置になっていた。壁一面の大きな窓からは、都会の灯りと夜空の星が遠く霞んで見える。誠也は窓際の席を選び、ゆったりと身を沈めた。

身体を包み込むソファは、まるで雲の上にいるかのような感触。彼はふと外を眺めると、遥か下の世界が小さな箱庭のように広がっていた。サウナの後のこのリラックスした瞬間は、誠也にとって一日の喧騒からの逃避であり、自身と向き合う大切な時間でもあった。

彼の手には、ラウンジ専用のハーブティーが添えられている。カモミールとラベンダーの芳ばしい香りが彼の感覚を更に研ぎ澄ませた。ティーカップから立ち上る蒸気と共に、心身ともに解き放たれた感覚が、ゆったりとした時間の流れを教えてくれる。温かいティーが喉を通り抜けるたび、彼の中の穏やかな波が広がっていく。

時折、ページをめくる音や、誰かの穏やかなため息が聞こえる。しかし、それらは静寂を壊すどころか、ラウンジの平和な雰囲気に溶け込んでいる。誠也はゆっくりと目を閉じ、深いリラクゼーションの中で心地よい眠気を感じ始めた。無重力のようなこの場所で、彼は日常の疲れを忘れ、リフレッシュされた自分自身を感じることができた。

ある時は本を読み、またある時はただ静かに過ごす。ラウンジでのこの時間は、彼にとって、都会の喧騒から離れて自分だけの時間を味わう、贅沢な瞬間だった。そして、ここ「空中庭園サウナ・アリューシャ」のラウンジは、そんな時を過ごすにふさわしい場所だと、誠也は心から感じ取っていた。

ととのいを終えて

電車の揺れに身を任せながら、大塚誠也は「空中庭園サウナ・アリューシャ」での一日を静かに振り返った。窓の外に流れる街の光は、まるで映画の一場面のように彼の目を楽しませるが、彼の心はまだあの空中の楽園に留まっていた。

彼は閉じた目の裏で、天空のロウリュの窓から見えた雄大な富士山のシルエットを思い描く。サウナの灼熱と富士の冷静さが織り成すコントラストは、誠也に新たな感覚を与えてくれた。そして星降る夜空のサウナで見上げた幻想的なLEDの星々は、彼の心に穏やかな悸動を刻んだ。

霧の楽園の水風呂での清涼感は、彼の肌にまだ残っているようで、その冷たさが彼の内側から全ての熱を奪っていった。外気浴スペースでの新鮮な空気は、彼の肺を満たし、深い呼吸はまるで生まれ変わったような感覚をもたらした。最後に温まったお風呂の心地よい温もりは、彼を優しく包み込む母の手のようだった。

レストランでの食事とスポーツドリンクの爽やかな甘さは、汗で失われたエネルギーを取り戻すとともに、味覚にも幸せをもたらした。そして、ラウンジでの安らぎの時間は、誠也の日常生活における慌ただしさを忘れさせてくれる宝石のようなひとときだった。

彼はふと、電車の窓に映る自分の顔を見つめる。その疲れた顔は、今はどこか達成感と充実感に満ち溢れている。一日の終わりに感じる満足感は、疲労の裏返しであることを、彼は良く知っている。家に帰るまでの間、誠也はこの感覚を大切に抱きしめながら、心静かに次の訪問を夢見るのだった。

あとがき

大塚誠也

「空中庭園サウナ・アリューシャ」という施設名の由来を聞いてみました！

「空中庭園サウナ・アリューシャ」の施設名には、以下のような意味が込められています。

空中庭園は、サウナ施設が自然の中にある高台や丘の上、あるいは建築の工夫を凝らして空に浮かんでいるかのような景観を持つことから来ています。訪れる人々が地上から離れた、まるで空中に浮かぶ庭園の中で心身共に浄化される経験ができることを象徴しています。

また、都市の喧騒から離れて、静寂と自然が織りなす空中の楽園を感じることができる場所という意味もあります。

「アリューシャ」は架空の名称であり、音響や響きに癒しや穏やかさを感じさせる造語です。心地よい音や響きは、リラクゼーションに欠かせない要素であり、名前に含めることで施設が提供する究極のリラックス体験を想起させます。

さらに、「アリューシャ」には、異なる文化や言語の響きが組み合わさっており、国内外から訪れるすべての人に開かれた、普遍的な癒しの場所であることを示唆しています。

この施設名は、自然と調和しながらも現実から少し離れた非日常の空間を提供し、心身のリフレッシュを図ることができる場所であることを強調しています。また、その響きから、施設が持つ穏やかで心を落ち着ける環境を連想させるようにデザインされています。

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大塚 誠也

OTSUKA SEIYA

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仕事帰りにサウナを巡るのが日課のアラサーリーマン。
ととのった後のサ飯が一番の至福。